普通級の子の学校生活が心配な方「うちの子、一斉指示が分かってなさそう。周りより何テンポか遅れていて、この先ついていけるか心配。指示通りが良くなる方法が知りたい」
このようなお悩みに、お応えします。
☑本記事の内容
✅一斉指示が通らない
「3つの理由」
✅一斉指示が通らない時の
「7つの対策」~本人への関わり方~
✅一斉指示が通らない時の
「2つの対策」~環境作り~
担任との面談、授業参観、習い事での様子など、
様々なキッカケを通して、我が子の一斉指示の通りづらさを知る親御さんが増えています。
「周りについていけなくなるんじゃないか..」
「いつか学校が嫌になるんじゃないか..」
心配な点が多くあると思います。
そこで本記事では、
「一斉指示が通らない理由・対策」をまとめました。
本記事の執筆者の私は、発達障害・グレーゾーン・発達がゆっくりな子の療育/相談支援を10年以上しています。
その支援経験を元に、本記事をまとめています。
また、本記事の後半では、一斉指示が通らない子が「先々困りやすい点・対策」もまとめています。
参考になれば幸いです。
一斉指示が通らない「3つの理由」~普通級~
一斉指示が通らない「理由」は、
3つあります。
①:指示を「聞いてない」
(ex.注意特性)
②:指示を「理解してない」
(ex.複数指示・長文の指示)
③:指示の内容が「やりたくない」
(ex.興味がない、苦手意識からの拒否)
①:指示を「聞いてない」(ex.注意特性)
「そもそも指示を聞いていない」という場合になります。
特に多いのが、お子さんの注意特性(注意の向け方の癖)によるものです。
✅注意が散りやすい(注意の転動性)
視界に入るモノ、音などの刺激で注意が散ります。気になるモノ、人の動き、人の話し声、外の車の音、エアコンの音など、様々なものが刺激になります。
✅周囲の音が全部同じ音量で聞こえる(注意の選択性)
先生の声、エアコンの音、外の車の音などが全て同じ音量で聞こえる特性になります。私たちは、無意識に聞くべき音に注意を向けています。例えば、外で人と話しをするときに、車の音、虫の鳴き声が聞こえていても、目の前の人の声に意識を向け聞くことができます。
ただ、注意特性がある子ですと、全部が同じように聞こえて、1つに絞って意識を向けることが難しくなります。騒がしくなくても、些細な音だけでも、先生の指示を聞く逃す場合があります。
✅集中力が切れやすい(注意の持続性)
一つのことに注意を向け続けることが難しい特性になります。先生の話を聞いていたけど、途中で集中が切れてしまい、指示の内容が把握しきれない状態になることがあります。
✅過集中
目の前のモノに没頭して、周囲の声が入りづらくなる特性になります。本を読み込んだり、手元にある物をいじるなどが挙げられます。
✅自分の世界に入ってる(自己刺激)
自分の世界に入り込んで、周囲の声が届きづらくなる特性になります。自分が好きなことを想像して入り込んでいることが多い為、周囲の状況把握が遅れる場合もあります(集団行動の遅れ)。個別で何度声掛けしても、なかなか反応しないこともあります。
②:指示を「理解してない」(ex.複数指示・長文の指示)
指示は聞いているけど、内容の理解が難しい場合になります。
よくあるのは、1つの指示は問題ないけど、複数の指示や長文の指示になると、漏れてしまうなどです。
中には、処理がゆっくりな為、指示のスピードに追いつけない場合もあります。
この場合は、理解する力(認知力)はあるのですが、処理が追いつかず、結果として指示を行動に移すことが難しい、となります(心理検査では「処理速度」といわれます)。
③:指示の内容が「やりたくない」(ex.興味がない、苦手意識からの拒否)
指示は聞いているし、理解もしているけど「やらない」と本人が自分の意思で選んでる場合になります。
多くの理由は、興味がない(興味があること以外やりたくない)、苦手意識が強い(失敗体験が多い)など、特性と過去の経験からくるものが多いです。
【関連記事】
一斉指示が通らない時の「7つの対策」~普通級~
ここでは、本人に直接アプローチする方法としての、
一斉指示が通らない時の「7つの対策」をお伝えします。
学校での一斉指示の場面ですと、先生の理解・協力が必要になります。
学校の先生の協力を得ながら、手立てを実行できるのが理想的です。
家庭でもできる手立ても多い為、様々な場面で活用いただければ幸いです。
①:「注意を引いて」指示を出す
(原因1:聞いてない)
②:「静かな環境を作って」指示を出す
(原因1:聞いてない)
③:「視覚情報」で伝える
(原因2:理解してない)
④:指示を「1つずつ」伝える
(原因2:理解してない)
⑤:「ハードル」を下げる
(原因3:やりたくない)
⑥:本人に「選んでもらう」
(原因3:やりたくない)
⑦:指示が聞けたら「ほめる」
(原因:全て)
①:「注意を引いて」指示を出す(原因1:聞いてない/注意が散りやすい)
一旦、お子さんの注意を引いてから、指示を出します。
・名前を呼ぶ
・肩をたたく
・本人の視界に入る
など、本人と目が合っているのを確認してから、指示を出すのが効果的です。
また席を先生の目の前にするのも1つです。
先生が注意を引きやすいですし、本人の視界に他の子が入りづらいので、注意が散りづらくなります。
②:「静かな環境を作って」指示を出す(原因1:聞いてない/他の音も気になる)
他の音が、同じ音量で聞こえる子(注意の選択性)の対策になります。
基本的には、先生の指示以外の音を最小限にすることです。
クラス全体に静かにするよう声をかけ、先生だけの指示が聞こえる環境を作ったり、窓や扉を閉めて他の音が入りづらい状況を作ります。
学校やクラスの状況によりますので、できる範囲のことを、先生と進められるのが良いと思います。
③:「視覚情報」で伝える(原因2:理解してない)
目で見て分かる手がかり(視覚情報)を提示します。
先生の指示は、音(聴覚情報)が中心であることが多いです。そのため、本人が理解できる手がかり(視覚情報)を増やすのが効果的になります。
視覚は、人が情報を得る為に、最も多く使う感覚になります。指示に含まれる視覚情報の割合を増やし、理解の手助けができると、指示通りが良くなりやすいです。
④:指示を「1つずつ」伝える(原因2:理解してない)
複数や長文の指示理解が難しい場合、その指示の情報量を減らす必要があります。
指示を1つずつ区切り、1つ終わったら次の指示を出します。
また、指示を出す時はゆっくり伝えると、より伝わりやすくなります。
⑤「ハードル」を下げる(原因3:やりたくない)
本人が取り組む難易度(ハードル)を下げます。
10問の課題なら5問にしたり、時間を半分にするなど、本人が取り組める様に調整します。
お子さんが「これならできるかも」「これならやってもいいかな」と思えるハードルを設定することがポイントになります。
⑥:本人に「選んでもらう」(原因3:やりたくない)
本人に選択肢の中から選んでもらいます。
「やりたくない」気持ちが強い場合、先生や大人から指示を出されても、実行は難しいです。
仮に実行できても、
「本当はやりたくなかった」
「もう次はやらない」
など、拒否感を強めてしまう場合もあります。
そんな状況を避ける為に、本人に選ぶ機会を作ります。
自分で選ぶことで、納得感ができて「やりたくないのに、やらされた」というネガティブな気持ちを最小限にするができます。
⑦:指示が聞けたら「ほめる」(原因:全て)
これまでの手立てを実践して、お子さんが指示を行動に移せていたら、ほめていきます。可能なら、その場で先生にほめてもらったり、家で家族がほめるなどです。
もし、ほめられるのが苦手な子でしたら、本人が「指示を聞くと良いこと(メリット)がある!)」と思ってもらえる様な声掛けもできます。
例えば、
「先生の話を聞いてると、こんなに点数(テスト・課題)が上がるんだね」
「持ち物聞けてたから、明日の用意がすぐ終わって、遊べる時間が増えてるね」
のようなイメージになります。
その子が感じるメリットに紐づけて伝えることが大切になります。
【関連記事】
一斉指示が通らない時の「2つの対策」~環境作り~
ここでは、本人への間接的なアプローチ(環境作り)としての、
一斉指示が通らない時の「2つの対策」をお伝えします。
予防的な意味合いが強いため、早めに動けた方が効果的になります。
①:スクールカウンセラーに相談
一斉指示が通りづらい特性があることを、早い段階でスクールカウンセラーの先生にお伝えします。
そして、本人に必要な関わりや環境作りなども相談できると良いです。
担任の先生に理解があり協力的なら、スクールカウンセラーの助言のもと、担任の先生と進めていくことが良いです。
②:予防的な学習対策
一斉指示が多少通らなくても、本人が全然気にしないタイプでしたら、何となく学校で過ごすことはできます。支援する中で、私も実際に何人も見てきました。
一方で、先々困る点として、”学習の遅れ” があります。当たり前のお話ですが、先生の話が聞けないということは、学習で遅れが出る可能性が高まります。
学習の遅れが出てくると、授業が辛くなり、学校が嫌になり、行き渋りから不登校になる子もいます。
問題が大きくなる前に、予防的な意味も込めて、早めの学習フォローが大切になります(勉強が得意な子は不要になります)
✅学習・宿題の助けになる「タブレット学習」
一斉指示が通りにくい子の場合、注意特性・理解の仕方(認知力)に合わせて、学習方法を変える必要があります。
学校教育の授業で学びづらさがある場合は、その子の特性に合わせて学び方を選んでいく必要があります。
その1つの学び方として、タブレット学習があります。
一斉指示だけでなく、教科書・参考書などの文面での “想像・理解” が難しい子にも、
アニメーション・動画などの、 “理解・想像しやすい学び方” があるので、良いと思います。
また、ドリル・プリント学習など、ペーパーの学習に苦手意識がある子にも、選択肢の1つになると思います。
✅小さな成功体験を積むためのツールにもなる
一斉指示が通らない子の多くは、学校で失敗体験を積んでいる場合が多いです。
注意されたり、指摘されたり、指示が分からずその子自身が困ってしまったり。
自己肯定感を下げない為にも、日常で気軽にできる学習の中で、“分かる” や “できる” という実感を作ることは、この先の生活で大事になってきます。
タブレット学習に関する、その他のメリット・デメリットなどの詳細は、こちらの記事をご覧ください。
発達障害に関わらず、グレーゾーン、発達が気になる子にも、共通した内容になります。
1つの学習サポートの方法として、参考になれば幸いです。
「【一斉指示が通らない】普通級でできる6つの対策」のまとめ
記事のポイントになります。
✅一斉指示が通らない
「3つの理由」
・指示を “聞いてない”
・指示を “理解してない”
・指示の内容が “やりたくない”
✅一斉指示が通らない時の
「7つの対策」~本人への関わり方~
・注意を引いて指示を出す
・静かな環境を作り、指示を出す
・視覚情報で伝える
・指示を1つずつ伝える
・ハードルを下げる
・本人に選んでもらう
・指示が聞けたらほめる
✅一斉指示が通らない時の
「2つの対策」~環境作り~
・スクールカウンセラーに相談
・授業の失敗体験の予防
・”学習の遅れ⇒授業が辛い⇒不登校” の回避
・予防的な学習対策
・タブレット学習
以上になります。
本記事が、お役に立てば幸いです。
【関連記事】