通級について知りたい方「通級って効果あるの?どんな場所でどんな子が通うの?通級について、詳しく知りたい」
このようなお悩みに、お応えします。
☑本記事の内容
✅「通級」とは
✅通級の「効果」
✅通級の「支援内容」
✅通級の「メリット」
✅通級の「デメリット」
✅通級を「選ぶ基準」
✅通級を「利用したい時」
✅通級を検討する子に
「最初に必要なこと」
✅通級を検討する子が
「備えておきたいこと」
お子さんの発達や今後の学校生活で心配がある方は、「通級(通級指導教室)」がどういった場所なのか、お子さんにとって必要な場所なのか、気になりますよね。
この記事を執筆している私は、療育指導/発達相談を10年以上しています。
その支援経験を元に、本記事では、「通級の支援内容、制度、効果、メリット/デメリット、利用方法、通級を選ぶ目安」について、まとめてみました。
普通学級の生活に不安がある方は、この記事で通級について把握して頂けると、お子さんに合った環境を選びやすくなると思います。
参考になれば幸いです。
「通級」とは
通級(通級指導教室)とは、普通学級に在籍している状態で、週に数時間、通級に通って、個別で授業を受けることをいいます。
勉強の補習ではなく、お子さん自身が、自分の特性を理解したり、得意な部分の活かし方、苦手なことの対処の仕方を学ぶことで、授業や生活上の困りを減らしていくことが目的になります。
平成5年に、通級の設置が全国で制度化されたため、学校内で通級がある学校は増加傾向にあります。
「平成29年の通級の実施調査結果」では、全国の学校の2割が通級が設置されています。設置数が増えているということは、それだけ必要としている子が、多くいることが分かります。
通級の「効果」
通級の効果は、お子様によって様々です。
週に数時間の時間で、教わったことが理解できれば、効果があると言って良いと思います。逆に、週数時間では足りない子もいます。
例えば、離席や他害(手を出す)など、行動面が激しい子には、明確な効果は感じにくいと思います。
✅通級の対象の子
普通学級に在籍しているお子さんになります。診断名は関係なく、お子さんが学校生活で困っていて、個別のサポートが必要な場合に、対象になります。
✅通級の判定基準
明確な基準は、特にありません。親御さんの考えを踏まえた上で、通級の担当、臨床心理士などの専門家が、総合的に必要なのか、判断するものになります。
✅通級の費用
基本的に費用はかかりません。ただお子さんによっては、教材費がかかる場合があります。
✅通級の時間
授業数でいいますと、週に1~8コマになります。ここは、お子さんによって、変わってきます。
※通常の授業は、週25~28コマ
✅通級の場所
学校によって、学校内に設置されている場合(自校通級)と、近隣の学校に設置されている場合(他校通級)があります。
自治体によっては、特別支援学校内、教育センター内にも設けられている場合もあるので、教育委員会等に確認することをおすすめします。
✅通級の先生
全員教員免許を持っています。特別支援の免許(ex.特別支援学校教諭免許など)は、持っていない先生も多いです。
通級の「支援内容」
通級に通うお子さんは、2つの計画書を通して、段階的にお子さんに合った支援をします。
2つの計画書とは、「教育支援計画」と「指導計画」になります。
✅教育支援計画
親御さん、学校、福祉/医療/療育機関などが連携し、お子さんの支援をより効果的にする為のツールになります。
1〜3年程度の長期的な計画になります。
✅指導計画
「教育支援計画」を踏まえて1年以内の目標を細分化して、学期毎/学年毎に目標を立て、支援をしていく短期的な計画です。
長期的な目標を見据えて、短期的な計画を活用しながら、お子さんの学習・生活上の困難さを減らしていく為の指導になります。
✅具体的な指導例
よくある1つの指導内容になります。他者の気持ちの理解が難しく、相手を傷つける発言をしてしまうお子様の例です。
指導の中では、場面を表すカードを見て、
・登場人物がどういう気持ちなのか
・なぜその気持ちになったのか
・その気持ちの相手にどういう声かけが適切なのか
などを、学んでいきます。
知識として学んでいる子は、先生が友達役をし、演技形式(ロールプレイ)で実践練習をしていきます。
このように、お子さんの困りに対して、必要なスキルや自己理解、対処法を学ぶ時間になります。
指導内容が、完全に同じものはありません。担当の先生が一人ひとりの子どもに合わせて最適な内容を考え、最終的には、お子さんの自立に繋げることが最終目的になります。
通級の「メリット」
通級のメリットは、5つあります。
①:「特性に合わせた」指導
②:「安心の場」になる
③:「普通級の子との交流」がある
④:「支援結果」が書面に残る
⑤:「普通級の在籍扱い」になる
(内申に含まれる)
①:「特性に合わせた」指導
お子さんの学びやすいよう、特性に合わせた指導が受けられます。
✅特性に合わせた指導例
【見て学ぶのが得意な子】
見通し表・図など視覚的な教材を多く提示
【聴いて学ぶのが得意な子】
口頭指示、歌/語呂合わせで覚えられる指導
②:「安心の場」になる
お子さんに合わせた内容になるので、成功体験が増え、自信に繋がり、安心できる場所になりやすいです。
・話をゆっくり聞いてもらえる
・分からないことは、何度も質問ができる
なども、お子さんの安心に繋がりやすい要素になります。
③:「普通級の子との交流」がある
在籍は、普通学級になるので、普通学級で過ごすことが大半になります。
そのため、1クラス30~40名の普通学級のクラスメイトと交流を持つことができます。
④:「支援結果」が書面に残る
小学校では、保育園/幼稚園のように毎日連絡帳でやりとりをするということは、ほとんどありません。
トラブルなど大きな出来事がない限りは、学期ごとに報告してもらうことが、一般的になります。
その点、通級は、担当の先生が日々記録(支援内容/お子さんの様子)をとってくれます。
書面に残るので、療育に通っている子は、療育機関にも共有することができます。
⑤:「普通級の在籍扱い」になる(内申に含まれる)
普通学級に在籍になるため、内申にも含まれます(公立校など受験できる選択肢が増える)。
他校に設置された通級で受けた授業でも、自校で行った授業に含まれます。
通級の「デメリット」
通級のデメリットは、6つあります。
①:在籍基準が「曖昧」
②:「場所が遠い」場合がある
③:「専門的な先生でない」場合もある
④:抜けた分の「授業の補修がない」
⑤:「子どもが傷つく」ことがある
⑥:「いじめのキッカケ」になる場合がある
①:在籍基準が「曖昧」
通級の支援対象となる障害の基準は、明確にはありません。
普通学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度とされています。
「○○だから通級が利用できる」とは一概に言えず、学習面や生活面など、学校生活で子どもが困難を抱えていないか、さまざまな面から判断されます。
明確な基準がないために、対象となるお子さんが、地域や学校によって違いがあるのが現状です。
②:「場所が遠い」場合がある
通級は、在籍校にない場合があります。他校の通級に通う場合は、親御さんによる送迎が必要なこともあります。
地域や学校よって違いますので、お住まいの自治体や学校に、通級の設置校がどこにあるか、問い合わせてみましょう。
③:「専門的な先生でない」場合もある
通級の先生は、全員教員免許を持っています(他の教員と同じ採用試験を通るため)。
ただ特別支援の免許(特別支援学校教諭免許)を持っていない場合が多いです。
免許が大事というわけではないですが、先生によって専門性に差があるというのは事実です(これは、特別支援に限らないですが)。
④:抜けた分の「授業の補修がない」
通級は、通常の授業を抜けて通うものです。抜けた分の補修がないのが、デメリットの1つになります。
⑤:「子どもが傷つく」ことがある
授業を抜けて参加するため、お子さんによっては「なんで自分だけ、みんなと違うの?」と疑問、不満を持つことがあります。
特に小学校高学年からは、自分を俯瞰して見れるようになるため、そう感じる子が多いです。
思春期のお子さんには、より丁寧に気持ちを聞くことが、必要になります。
⑥:「いじめのキッカケ」になる場合がある
クラスメイトによっては、クラスを抜けることをからかってくる場合があります。ひどい場合は、いじめのきっかけになることも。
また悪気なく、疑問に思って質問をしてくる子もいます。本人にとっては、それがストレスになる場合があります。
ここは、担任からのクラスメイトへの説明が大切になるので、担任との連携が不可欠になります。
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通級を「選ぶ基準」
通級は、お子さんが過ごす場所選びの、選択肢の1つになります。
ここでは、選ぶ基準を3つにまとめてみました。
①:子どもの「気持ち」
②:「学べる・楽しめる」か
③:「第3者」の意見
①:子どもの「気持ち」
お子さんの気持ちを聞くことが、大切になります。
お子さんは望まないと「いきたくないのに、無理やりされた」「勝手に決められた」とネガティブな気持ちになります。
お子さんの気持ちがないと、機会があっても、良い方向には進展しづらくなります。形だけで身にならなくなってしまうためです。
客観的に見て、通級にいく必要がある場合は、お子さんと話をし、必要性や納得感を作って進めていくことが、大切になります。
②:「学べる・楽しめる」か
お子さんに合っているのか、確認することが、大切になります。
具体的には、下の3つが重要になります。
・楽しめるか
・学べるか
・成功体験になるか
理想は、お子さんが「楽しい!分かる!できた!」と実感できることです。
可能であれば、お子さんと一度見学にいく、雰囲気、授業の内容を直接確認されるのが良いです。
③:「第3者」の意見
担任、通級の先生、スクールカウンセラー、心理士、療育の指導員など、第3者の意見を聞くことになります。
また就学時健診の先生や医師(かかりつけのクリニックなどある場合)の意見も参考になります。
お子さんのどの場面での様子を見て、必要だと判断するのか、具体的に把握できると良いと思います。
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通級を「利用したい時」
「小学校入学前」、「入学後」に分けて見ていきましょう。
①:小学校入学前
入学前には、教育委員会に就学相談をすることができます。地域によって内容や呼び方、手順が異なります。
就学相談については、お住まいの自治体、学校に問い合わせてみましょう。
✅年中の4~6月頃:情報収集する
お住まいの市区町村の教育委員会に問い合わせたり、HPを参照して、地域にある通級の有無などについて、情報を集めておきましょう。
また4月~6月ごろにかけて、教育委員会が幼稚園、保育園、発達支援センターに「個人調査票」「就学に関する調査票」の作成を依頼します。
通常の学級・学校に就学することに不安があると思われるお子さんについて、園やセンターは親御さんの了承を得て、調査票を作成します。
そして該当のお子さんをもつ親御さん向けに、教育委員会が就学についての説明会を行います。
⚠注意点:私立/認可外の園は、情報が回らない場合もある
私立や認可外の保育園/幼稚園は、教育委員会の管轄外なので、就学関連の情報が回ってこない可能性があります。
その場合は、ご自身で市区町村の教育委員会に問い合わせをして、就学相談を受けることをお勧めします。
✅7~9月ごろ:就学の相談をする
市区町村の教育委員会へ連絡すれば、就学相談を受けることができます。
就学相談では、専門の就学相談員と保護者との面談を通してお子さんにとって、最適な就学先を決めます。
お子さんの状態を把握するために、専門員が検査の実施や在籍園・在籍校に訪問することもあります。
お子さんの特性、保護者・専門家の意見、学校や地域の状況などの総合的な情報をふまえ、就学指導委員会がお子さんにとって良いと思われる就学先を決定します。
この決定に保護者の方が同意をすれば就学先が決定します。もし同意できない場合は、その旨を教育委員会に連絡し、再度就学相談を受けることもできます。最終的には保護者の方の意向が尊重されます。
就学相談では、子どもの状態を正確にしっかりと伝えることが大切です。医療機関で受けた診断書、療育手帳、検査結果などがあれば、持参することをお勧めします。
②:小学校入学後
小学校入学時は普通学級に在籍していたお子さんが、その後通級による指導が必要となることもあります。その場合、小・中学校の校内委員会がサポートしてくれます。
校内委員会とは、子どもの状態に早期に気付き、適切な支援を行うために小・中学校に設置されたものです。
その役割とは…
・支援が必要な子の早期把握
・支援計画書の作成
・保護者相談の窓口
・担任の指導のサポート
・全教職員の共通理解を図る(研修など)
・専門家に判断を求めるかどうかの検討
このような役割を持った校内委員会が、必要な子への支援の機会提供につなげていきます。
「【通級は効果がない?】通級指導教室を徹底解説!内容から判定基準」のまとめ
記事のまとめになります。
✅通級とは
・普通級に在籍
・週に数時間
・個別で授業が受けられる
✅通級の効果
・効果はお子さんそれぞれ
✅通級の支援内容
・長短期の支援計画を通して指導
・詳細は、本記事参照
✅通級のメリット
・個人に合わせた指導
・安心の場になる
・普通学級の子との交流が多い
・支援の結果が書面に残る
・普通級の在籍になる
✅通級のデメリット
・在籍の基準が曖昧
・場所が遠い場合がある
・専門的な先生ではない場合もある
・抜けた分の授業の補修がない
・子どもが傷つくことがある
・いじめのキッカケになる場合がある
✅通級を選ぶ基準
・子どもの気持ち
・学べる・楽しめるか
・第3者の意見
✅通級を利用したい 入学前
・住まいの自治体/学校に問い合わせ
・就学相談を受ける
✅通級を利用したい 入学後
・担任に相談
・校内委員会がサポートしてくれる
以上になります。
通級制度は、2017年3月に、「義務標準法の改正法案」が国会に提出・可決され、
10年間で通級指導を行う教員を段階的に増やすことが決まっています。
ただ、現場としては、まだまだ支援の機会が足りていないのが現状です。
本記事が、支援を必要とする子・親御さんの参考になれば、幸いです。
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